序章

 

 流星群が降り注ぐ、熱帯の湿ったサバンナの大地に唄が響いていた。

 輪唱や、唱和のようなものではない。ただ、天と地に向かっての祝詞を喉の限りに歌い、踊り続ける。

 スポットライトは青々とした満月と、煌きながら落ちていく流星だけで事足りた。

 天空と大地に挟まれた全ての生物が、歌うように月と星に遠吠えする。

 地鳴りのような打楽器が鳴り響き、獣のような重低音と小鳥の囀りのような高音。

 共鳴するリズムに高揚する精神は、肉の内側で歓喜に踊る。

 焦れるように集まってくる生命達。ありとあらゆる雄と雌、男も女も踊って歌い、恋焦がれるように吼えていた。

 生命達が円となり、うつ伏せに眠る少年を囲み、祈りの唄と喜びと畏怖の踊りを舞う。

 背中に彫られた青白い、複雑な文様が刻まれた刺青を背負うその少年を、サバンナにいる生命達が畏敬の念を込めて唄う。

 この世全ての魔を目前にしたように慄き、貴く淡い幻想のように崇めていた。

 生命が一丸となっての唄は、天と地の狭間にいる少年のための祝福であり、魔の王冠を被る少年の安らぎを願う祈りだった。

 

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